台湾茶の中でも比較的メジャーでよく見かける凍頂烏龍茶。その産地である凍頂山を訪ねてみました。

凍頂山があるのは南投縣鹿谷鄉。同じく台湾茶の一大ブランドである杉林溪や観光地として人気の高い溪頭の近くです。
例によって公共交通でのアクセスを目指し、バス路線を調べたところ竹山発で山の上まで行く路線がありましたが竹山でのバス同士の乗り換えで時間をロスする上に本数が少なくスケジュールと合わず利用を断念。しかし麓の鹿谷市街までならば便が多数あり、地図で確認した歩行距離は1.8kmほどで無理はないと判断しこの方法で行くことにしました。

スケジュールの都合で台中に前泊し、鹿谷直通のバスに乗車。台中から鹿谷へは高鐵台中を経由し溪頭まで行く観光路線の台灣好行バスと南投・集集線濁水などを経由しひたすら一般道を走り最深部の杉林溪まで行く6871路があり、前者のほうが本数が圧倒的に多く所要時間も短いのですが、今回は後者を利用しました。特に深い理由はなく、以前一度乗ったことがあり久しぶりに乗ってみようくらいの感覚です。
なおこの路線は一日5往復しかないのに3社の共同運行(以前は4社でした)で、実際の運行会社にかかわらず員林客運のターミナルから発車するので注意が必要です。

台中ターミナルから乗車2時間25分で鹿谷に到着。台中発車時点ではガラガラでしたが途中から通路に乗客が溢れ、積み残しも出る人気ぶりでした。凍頂山へは鹿谷停留所ではなく一つ先の廣興が最寄り。

少し戻ったところに案内看板があります。

特に迷う箇所はなく、この道をひたすら道なりに進めばOKです。しかし出だしから急な坂が続き、思いの外大変でした。

途中の看板と付近の茶畑。


歩き始めてから30分ほどで凍頂巷に到着しました。茶どころらしく製茶所が何軒も点在しています。

今回は事前に調べておいた軒記茶業さんを訪ねることにしていたのですが入口が見当たらず。うろうろしていると道端にいたおばちゃんに声をかけられたのでここへ行きたいのですが、と言うと手前の道を入って活動中心を抜けた先よと教えてくださいました。

そちらへ行くと確かに看板がありました。後で聞いた話によると活動中心の土地も元々は軒記茶業さんのもので、道路に面した一部を政府へ売ったため公共施設の中を抜けて出入りするようになったとのこと。

最初はご主人のお父さんにご対応いただいたのですが、すぐに隣からご主人の林さんも出てこられました。曰く「さっき隣の人からこれから日本人が行くよーと電話貰ってね」。さすがの田舎ネットワーク。早速お茶を淹れていただきました。淹れていただいたのは凍頂茶はもちろん、他にここの茶畑で栽培されている金萱茶やご主人が購入してこられたスペシャルのお茶など。

これは3種類のお茶を淹れ比べている様子。茶葉コンテストの審査ルールに則った淹れ方で、3gの茶葉から5分かけて抽出し、さらに5分冷まして味を評価するという独特の方法が用いられます。公平を期するためすべて同時に同じ方法で淹れます。

お茶をいただきながら実に2時間に渡り興味深い話を聞かせていただきました。その中から印象に残った話をいくつか。
・凍頂茶は非常にメジャーなブランドで市場に大量に出回っているが、凍頂産のものはごくわずか。それ以外も偽物というわけではなく、別の産地の茶葉を使い凍頂の製法で加工したもの。風味は似ているが、やはり凍頂産のものとそれ以外では差がある
・凍頂茶のブランドはやや難しい立ち位置にある。上には高山茶などの比較的高級なグループ、下には金萱茶などの低価格なグループがあり両者に挟まれた凍頂茶は中途半端になってしまう
・凍頂茶は焙煎の行程があるため他のお茶に比べて生産に手間や時間がかかる(同じく焙煎がある鐵觀音なども同様)
・凍頂では生産者の高齢化が進んでおり、後継者問題が深刻。70~80代の生産者が多く体力的にきつくなるとやめていき、収穫してすぐに売れる果物や野菜に転向していく。茶畑もどんどん減っていて、以前はあたり一帯すべて茶葉だけであったものが、今はわずかに
・凍頂茶は焙煎しているため酸化しにくく、他の茶葉が1~2年しか保存できないのに対してかなり長く保存できる
等等台湾茶の未来が心配になる情報が多く衝撃でしたが、俺はできるところまで頑張るよ!(長期保存可能な特性を生かして)できるうちに沢山生産し、いつまでも手に入るようにするよ!という力強いお言葉を頂きました。

一通りお茶を堪能した後は茶畑を案内して頂き、品種の違いなどを説明して頂きました。

茶葉の見分け方とか面白かったです。

一周して戻ったところで大事な目的である茶葉を購入。もちろん買うのは凍頂烏龍茶です。四兩(150g)パックで500元でした。

最後には鹿谷市街まで送ってくださり、昼食をご馳走していただいた上に農協の二階にある茶葉文化館の案内もして頂くという至れり尽くせりのサービスで感謝しきり。いつか日を改めて日本のスペシャルな緑茶でも手土産に再訪したいところです。

帰りは台灣好行バスを利用し高鐵台中まで乗車。高速経由なので丁度1時間ほどで到着しました。台中ターミナルまで乗っても1時間半かかることはないと思いますので、やはり6871路よりこちらの方が早くて便利です。
ただこの路線、かなり混雑しますので注意が必要です(ご主人曰く火・木・土は公務員のハイキングで混みやすいとのこと)。始発の台中ターミナルで積み残しが出ることもありますし、私が乗った逆方向のこの便も満員の札を掲げておりこれは乗れないか?と思いましたが保留位(途中停留所から乗る人を考慮して始発ターミナルなどでは乗せない席)があったようでぎりぎり乗れました。高速道路経由の路線は立ち席アウトなので、席が埋まったらそれっきりです。溪頭方面へお出かけでこの路線を利用する場合は時間に余裕を持って、なるべく早く列ぶことをお勧めします。

軒記茶業
南投縣鹿谷鄉鹿谷鄉彰雅村凍頂巷12-1號
0911-970777
公式FB


員林客運6717路「凍頂」下車すぐ
台灣好行溪頭線など「廣興」下車徒歩30分
※ご主人外出の場合もあるため事前連絡推奨

— おまけ —
帰りのバスを待つ間街をブラブラしているとお茶の包装材専門店を見かけました。袋、缶、シール等何でもあり。



差し当たって使いみちはないけれど購入してみた品々。