高鐵高雄駅から車で15分ほどの郊外に位置する仁武區。その中心部から外れた倉庫などが点在する地区にひっそりと日本統治時代の神社が鎮座しています。各地に存在する神社遺跡の中でもかなり知名度が低く、謎に包まれた前埔厝神社を訪問してきました。

神社付近に公共交通は通っておらず、訪問にはタクシーが仁武市街からUbikeなどを利用する必要があります。私は当日近くに用事があったためそこから徒歩で向かいました

やがて左手に目的地が見えてきました

こちらが前埔厝神社(現・福德宮)です。建物に至る石段は一般的な台湾の廟宇とは異なり明らかに神社の「参道」です。手前の両脇にはかつて石灯籠があったであろう台座が残っています

建物自体はあまり神社らしくないですが、これにはカラクリがあります

それを紹介する前にまず獅子を観察。おそらく元は狛犬があったと思われる場所ですが、台座には民国69年(1980年)改修とあり、スタイルからしても後年設置されたもののようです

ここで一旦裏側に参ります。すると日本式の木造建築をすっぽり覆い隠すように台湾式のコンクリート建築が増築されている奇妙な光景が現れました。このような構造のため当然正面から見ると神社らしさが感じられないのです

正面に戻ります。入口前には日本式の鳥居

では中へ入ってみましょう。周囲と一体化していますが、よく観察してみると正面の庇や柱は木造で元神社のものであることがわかります。土地公像の下にある石の台座は当時からあるようです

後ろを振り返るとこちらは完全に廟

他所とは異なる独特のスタイルとなっている前埔厝神社ですが、その詳細は一切わかっていません。主祭神はこの場所にある理由も不明で、仁武の集落とは無関係とされています。このような形態になった理由については地元の人たちが残したがった・元の神様に対し不敬となるから残した・元々は神社の建物をそのまま利用していたが狭すて香炉なども置けないため増築したなどと推測されています。
なかなか行きづらい場所ではありますが、歴史に興味のある方は訪れてみてはいかがでしょうか